でたらめ書評

2005年07月09日

本日の本棚 公命党・創化岳会の真実 平野 貞夫[著]


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(原稿用紙が落ちている。何やら赤い液体が付着しているようだ…。)

(原稿用紙を読みますか?)

(→はい)

公命党・創化岳会を内側から見た45年の裏面を克明に綴った本作品は、その内容の過激さからか、売り上げを伸ばしている。 
衆議院事務局で33年間、参議院議員として12年間、筆者は永田町という特殊な場所で生きてきた。
そのほとんどは、政治の裏方として、与野党の政治家から相談を受けることであった。その中で筆者は膨大なメモを残してきた。
また、この目で見、この耳で聞いた政治の真実を日記に書いてきた。その大部分は「公命党・創化岳会」との関係だ。
民自と公命との癒着は、どのようにして始まったnだげあげrs5ふじこ;q4l


(原稿はここで途切れている…)

(アイテム「血の付いた原稿」を入手しますか?)

(→はい)

(背後に、何者かの気配がした…!)

(振り向きますか?)

(→はい)

謎の男「それを見てしまったな…。見なければ***に済んだのに…。」

(次の瞬間、貴方の頭部に衝撃が走った!)

(貴方の視界が徐々に赤く染まってゆく…)

(徐々に薄れてゆく意識の中で、貴方が見たものは、哀れむような表情の男だった…)

BAD END 「世の中、知らない方がいいこともある」

(Continue?)

はい/いいえ


at 15:20|Permalink

2005年07月01日

本日の本棚 anago 林真理子[著]

まさに、魚ホラーともいうべき新ジャンルを確立した衝撃の長編小説。
天ぷら、お寿司、蒲焼、出汁巻き卵、煮付け…
アナゴにはまった女の、カロリーとの凄惨な戦い、そして同性への嫉妬を克明に描くこの作品は、多くの女性の共感を勝ち取るだろう。
この小説の中には、女性ならだれしも経験してきた、思い出すだけで“食べ過ぎた”食事のすべてのパターンがある。

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後輩から「あなご」とからかわれるほどのアナゴ好き、奈央子は、一流商社の一般職で33歳。
同期のほとんどが寿退社か転職している。そこそこ恋愛もしたし見合い話もあったが、結婚には至らなかった。
結婚したくないわけではない。デートに金を使うぐらいなら、大好物のアナゴを食べる為に使いたいのだ。
年々増す己の体重にうんざりしながら、アナゴを越える良い男がいないと嘆く。

林真理子は、女性の心理を描くのが上手い。
特に、好物か男かの選択肢が切実に迫られている30代OLの心の揺れを描かせたら、他の女流作家の追随を許さない。
奈央子が男性と会い、ささいな仕草からその男性を好物のアナゴと比較する辛辣な観察眼といったら、作者は本当にアナゴが好きなのでは、と疑うほど的を得ている。

だがこの本は、30代女性の恋愛・食事観を描くだけでは終わらない。
物語は、結婚退職した後輩・絵里子に旅先で会い、彼女もまたアナゴ好きだという事実を知ったところから急展開していく。
奈央子は絵里子が自分より高級なアナゴを食べていることが許せない。
エリートで優しい夫、何不自由ない暮らし、その上アナゴまで私よりいいものを食べるっていうの!
奈央子は嫉妬し、絵里子の家庭を崩壊させるべく動き出す…。

読み進むうち、得体の知れない虫が這うような食欲が、じわじわ足元からせり上がってくる。
美味そう。絵里子が頬張る高級アナゴの描写も実に巧で、食欲をそそる。
だが、絵里子への対抗意識から、どんどん普通の幸せから遠ざかっていく奈央子が、鬼の形相で喰らい付く安物のアナゴも、これまたおいしそうなのである。
それもそのはず、作者の林真理子は、執筆に当たって、「クッキングパパ」の作者うえやまとち氏に徹底した指導を受けたという。

そもそも、食べ物であるアナゴと人間の男を比較するのは、本来は不自然な話である。
しかし、奈央子にとっては、そこに違和感が無いのである。
彼女にとって、アナゴも男も、幸せをもたらす一つの手段に過ぎない。
しかし、どちらか一つしかとることは出来ない、と彼女は考えるのである。
アナゴをちょっと我慢して、男を手に入れようとは考えない。
「それがアナゴ系のプライドよ」と、奈央子はあくまでもアナゴを我慢することをよしとしない。
女性心理に疎い男性が作者の本を読んだら、無邪気にアナゴを食べる若い女の子達も、胸の内でオレと比較しているのか!と女性不信に陥るかもしれない。
もっとも、マトモな男性が、林真理子の本を手に取ることはないだろうが…。

そして、その思いもつかないラストに、あなたはきっと涙するだろう。
本を閉じた瞬間、アナゴが食べたくなるに違いない。

本作品は、グルメ誌「Kuouze」連載中、丸の内OLの間に“anago系”という言葉や“anagoメール”なる現象まで生み出した。
“anago系”とは、男よりも自分の好物を取る誇り高いOLのこと。
そして、“anagoメール”とは、「今日ちょっとアナゴ食べに行かない?」というお誘いメールのことを言う。
お陰で都内の飲食店では、OLからアナゴ注文が殺到し、全国のアナゴ水揚げ量も従来から30%も増加したという。
まさに「anago」ブーム恐るべしである。


at 14:03|Permalink

2005年06月25日

本日の本棚 頭がいい人、悪い人の見分け方 樋口裕一

昨年7月の発売以来、常に売り上げランキングの上位に食い込んでいるこの本。
読者たちは、その内容のあまりのシンプルさと過激さに、不思議な魅力を感じているようだ。
その魅力とは、一体何なのか。

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この「頭がいい人、悪い人の見分け方」はたった1ページしかない異例の本である。
しかも、その1ページすらほとんど空白で占められている。
こうした出版スタイルは出版史上、まれに見るものであるという。
このような、シンプルと言えばあまりにもシンプルすぎる本が、なぜこれほど話題を呼んでいるのか。

筆者である樋口裕一は、本書の最大目的である「頭のいい人、悪い人の見分け方」の方法論を、わずか一行の文章に集約している。
その集約があまりにも正鵠を得ており、読者を激しく震撼させ、圧倒的な説得力の下にねじ伏せるのである。
すなわち、表紙をめくればそこにはたった一行、こう書かれているのである。

「こういう本を読む奴は、たいてい頭が悪い。残念」

そこに在るのは、一見悪意に満ちた読者への突き放しである。
我々読者が持っていた「頭の良し悪しを見分けたい」というささやかな望みを、容赦なく突き崩す一撃である。
しかし、これは限りない優しさに満ちた一言でもあるのだ。
これからはこの手の本に騙されてはいけないよ、という筆者独特のエールなのである。
そうした筆者の優しさに触れ、我々読者は新しい希望を見出す。
頭が悪かった自分からの、希望に満ちた脱却である。この本は、そうした希望を我々に示唆してくれるのだ。
こうして、己の頭の悪さを自覚した読者は、それを忘れないためにこの本を持ち歩くのだと言う。

後書きには「ちなみに私は頭がいい」と書かれているのも筆者一流のユーモアが溢れており、微笑ましい。
「知のマニュアル」を人々が盲目的に求める今の時代、こうした本の存在は貴重である。
本当の頭のよさとは、マニュアルから得られるものではない。
知とは経験に即したものであるべきで、頭に詰め込めばそれで良いというものではないのである。
この「頭がいい人、悪い人の見分け方」はまさに、知的マニュアル全盛時代への、高らかな警鐘であると言えよう。


at 15:28|Permalink

2005年06月19日

本日の本棚 関東を出よ(上) [著]村上竜

関東を出よ(上) [著]村上竜

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これまで関東圏から一歩も出たことの無い老夫婦が、80歳を迎えた記念に、人生で初めて関東脱出に挑む。

意味不明、というもおろかなこの物語を、リアルで緊迫したサスペンス小説に仕立てあげたのは、村上竜の卓越した調査力と妄想力である。
非凡過ぎるイマジネーションを、細密な世界認識が何とかと支えている。

今年で80歳を迎える老夫婦、高橋良雄・貞子は、今まで関東圏を一歩も出たことが無い。
しかし、良雄は、80歳の誕生日の朝、貞子に関東圏を出るという決心を告げる。
二の足を踏む貞子の説得シーンに300ページもの分量を割いているというから驚きだが、決して飽きさせないのは村上の技巧が優れているからだろう。

良雄は経済学・哲学・法学等、あらゆる理論を用いてようやく貞子の説得に成功する。
説得を始めてから、既に二年の月日が経とうとしていた。良雄はようやく関東を出られる、と喜ぶが、そうは問屋が卸さない。
今度は何を着ていくかで、再び貞子との押し問答が勃発してしまう。
人生最後の晴れ姿だから、とラメ入りのフリルワンピースを着込もうとする貞子を、良雄が懸命に宥めるシーンはまさに圧巻だ。
良雄がいかなる手法を用いて説得に成功したか、それは是非本編で確かめていただきたい。

何とか着ていく服も決まり、いよいよ出発に向けて準備に入る二人。
しかし、そこに突然一本の電話が入る。妻の友人からであった。
電話は延々と続き、日が暮れても一向に妻は電話を切ろうとはしない。業を煮やした良雄は、電話線を切断しようとする。
させじと妻も、包丁を持ち出して応戦し、舞台は一転、夫婦間のバトルシーンへと突入する。

女だからと舐めてかかった良雄は、思わぬ苦汁を舐めることとなる。
怒涛の勢いで紡がれる文章からは、ぶつかり合う包丁の音や、老夫婦が咳き込む音が聞こえてきそうである。
死力を尽くして戦う二人は、やがて己が全てを賭けて、互いに渾身の一撃を放つ。
まさに、新時代の夫婦のあり方を予感させるような、そんなワンシーンである。
良雄の放った「第八聖刃改 大車輪」と、貞子の放った「アポカリプス・ダキトゥス」が真っ向から激突し、周囲一体は凄まじい衝撃に襲われた。
立ち込める白煙の中、たたずむ夫と妻。本書における、最高のクライマックスシーンである。
徐々に晴れてゆく煙の中、やがて一人がゆっくりと崩折れる。倒れたのはどちらなのか…
という非常に先が気になるところで、上巻は終わっている。
この時点で、ストーリーの開始から既に6年が経過しようとしているが、二人はまだ関東を一歩すら出ていない。
戦いに敗れたのはどちらか、二人は関東を出ることが出来るのか。全ては下巻で明かされることになる。

2890ページにも及ぶこの超大作は、バトル小説としても見事な完成を見せている。
流れるような良雄の剣捌きや、風の如き貞子の魔法詠唱の緻密な描写にはただただ驚かされるばかりである。
また、これからの時代の夫婦の在りかたを啓示すると共に、既存の夫婦社会への疑問を投げかける。
夫・もしくは妻との関係に疑問を持っている人には、是非読んでいただきたい作品である。
特別付録として、メモ帳150ページと、1年分のスケジュール表、更には関東圏全路線図が付いているのも嬉しい。

―――君は、関東を出ることができるか。


at 21:55|Permalink
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